【注意】未経験エンジニア求人に潜む、5つの落とし穴

「未経験からエンジニアになりたいです」
転職支援をしていると、この相談をよくいただきます。
エンジニアは、経験とスキルを積み重ねることで、年収を上げたり、専門性を身につけたり、働き方の選択肢を広げたりできる仕事です。
これからもIT人材の需要は続くと考えられており、キャリアの選択肢としてエンジニアを目指すこと自体は、決して間違っていません。
ただし、最初に一つだけ、非常に大切なことを伝えておきます。
「未経験歓迎」と書いてある求人なら、誰でもエンジニアになれるわけではありません。
ここを勘違いしたまま転職活動を始めると、
「未経験者を育ててくれると思ったのに、全然採用されない」
「エンジニアとして入社したのに、まったく違う仕事をしている」
「研修があると聞いていたのに、ほぼ自習だった」
「何となく開発エンジニアを選んだけれど、自分には合わなかった」
ということが起こります。
未経験からエンジニアを目指す人に必要なのは、夢を諦めることではありません。
未経験という言葉の意味を正しく理解し、正しい入口を選ぶことです。
「未経験」と「何もしていない人」は違います
まず、ここを強くお伝えしたいです。
企業が求人に書いている「未経験歓迎」とは、
何も知らなくても、何も勉強していなくても、入社後に会社がすべて教えてくれる
という意味ではありません。
企業が採用したい未経験者とは、
POINT
実務としてその仕事を経験したことはないけれど、その分野に興味を持ち、自分なりに勉強し、すでに行動を始めている人です。
例えば、開発エンジニアを目指すのであれば、
- プログラミングの基礎を学んでいる
- 実際にコードを書いたことがある
- 簡単なWebサイトやアプリを作っている
- GitHubなどで制作物を公開している
- ITパスポートや基本情報技術者試験の勉強をしている
- なぜ開発をやりたいのか説明できる
といった行動が求められます。
インフラエンジニアを目指すのであれば、
- ネットワークやサーバーの基礎を学んでいる
- Linuxの基本操作を試している
- CCNAやLinuC、AWSなどの資格を勉強している
- クラウドやセキュリティに興味を持っている
- インフラエンジニアの仕事内容を調べている
といった準備が必要です。
実務経験がないことは、まったく問題ありません。
しかし、
「まだ何もやったことはありません」
「入社してから教えてもらうつもりです」
「研修が充実している会社がいいです」
「家にパソコンはありません」
という状態では、企業からすると、採用する理由がありません。
厳しい言い方になりますが、
会社は、学費を払わなくても入れるプログラミングスクールではありません。
企業は未経験者を採用した後、給与、社会保険、採用費、研修費、教育担当者の人件費など、多くのコストを負担します。
さらに、未経験者が一人前になるまでは、会社に十分な利益をもたらせないこともあります。
それでも企業が未経験者を採用するのは、
「この人なら、自分から学び続けてくれそうだ」
「現時点では未経験でも、将来活躍してくれそうだ」
「すでに行動しているので、本気度が高そうだ」
と感じるからです。
未経験採用で見られているのは、現在の技術力だけではありません。
興味、学習習慣、行動力、継続力、そして将来性です。
「未経験だから分かりません」は仕方ありません。
しかし、
「未経験だから何もしていません。会社から教えてもらいます」
では、ほとんどの企業で受かりません。
注意
未経験とは、何もしていないことを許してもらえる魔法の言葉ではないのです。
未経験からエンジニアになるのは簡単ではない
「パソコンを使う仕事だから、何となく自分にもできそう」
「将来は在宅勤務ができそう」
「手に職をつければ、すぐに給料が上がりそう」
「人と話すのが苦手だから、エンジニアになりたい」
このような理由だけで目指すと、かなり苦労します。
エンジニアの仕事には、華やかな部分だけではなく、
- 分からないことを自分で調べる
- エラーの原因を一つずつ確認する
- 地味な設定や検証を繰り返す
- 新しい技術を学び続ける
- 状況を正確に報告する
- チームで協力して仕事を進める
- 納期や品質を守る
といった力が必要です。
一日中、黒い画面に向かって格好よくキーボードを打ち、たまにコーヒーを飲みながら、
「ふっ、また世界を変えるコードを書いてしまった」
となる仕事ではありません。
実際には、
「なぜ動かない」
「昨日まで動いていたじゃないか」
「スペルが一文字違っただけかい」
という地味な戦いの連続です。
そこで必要になるのが、
集中力、忍耐力、学習力、好奇心、協調性です。
分からないことから逃げず、調べ、試し、失敗し、それでも続けられる人が成長します。
「エンジニアになりたい」だけでは少し広すぎる
エンジニアと一口に言っても、仕事内容はさまざまです。
代表的なものとしては、
- Webサービスやアプリを作る開発エンジニア
- ネットワークやサーバーを支えるインフラエンジニア
- クラウド環境を設計・構築するクラウドエンジニア
- システムを守るセキュリティエンジニア
- システムの監視や保守を行う運用エンジニア
- 不具合がないかを確認するテストエンジニア
- 社内のIT環境を支える社内SE
- ユーザーの問題を解決するヘルプデスク
などがあります。
そのため、
「エンジニアになりたいです」
だけでは、まだ志望動機として不十分です。
何を作りたいのか。
何を支えたいのか。
どのような技術に興味があるのか。
どの仕事なら学習を続けられそうなのか。
そこまで考えておかないと、入社後に、
「思っていた仕事と違いました」
となってしまいます。
開発エンジニアだけが正解ではありません
未経験者から特に人気があるのが、開発エンジニアです。
Webサイトやスマートフォンアプリ、ゲーム、業務システムなどを作る仕事には、確かに分かりやすい魅力があります。
「自分が作ったものが動く」
「サービスとして世の中に残る」
「プログラミングスキルが身につく」
という点に憧れる人も多いでしょう。
ただ、人気があるからこそ競争も激しくなります。
プログラミングスクールを卒業した人、専門学校や大学で学んだ人、自分でアプリを作っている人などが同じ求人へ応募します。
その中で、
「未経験ですが、興味があります」
だけでは、なかなか選ばれません。
さらに、現在は生成AIによって、コードの作成、修正、テスト、仕様書の下書きなど、ソフトウェア開発の一部が急速に効率化されています。
IPAも、AIがプログラム開発を含むソフトウェア開発へ大きな影響を与えているとしています。
だからといって、開発エンジニアという仕事がすべてなくなるわけではありません。
実際、海外の公的な雇用予測では、AIの普及を前提としてもソフトウェア開発者の雇用増加が予測されています。AIを活用したシステムを開発し、保守し、業務へ組み込む人材も必要になるからです。
ただし、今後は、
言われたとおりに簡単なコードを書くだけの人
の価値は下がっていく可能性があります。
反対に、
- 顧客の要望を整理できる
- システム全体を設計できる
- AIが作ったコードを正しく確認できる
- セキュリティや品質を担保できる
- AIを使って開発速度を高められる
- チームや顧客とコミュニケーションを取れる
- 業務知識と技術を組み合わせられる
といった人材の価値は高まるでしょう。
つまり、これから開発エンジニアを目指すのであれば、
AIと競争するのではなく、AIを使いこなす側へ回る必要があります。
「プログラミングを覚えれば一生安泰」
という考え方は、もう危険です。
インフラエンジニアという現実的な選択肢
一方、未経験者にとって比較的キャリアの入口を作りやすいのが、インフラエンジニアです。
インフラエンジニアは、システムやサービスが動くために必要な、
- ネットワーク
- サーバー
- クラウド
- データベース
- セキュリティ
- 監視環境
などを設計、構築、運用、保守する仕事です。
どれだけ素晴らしいアプリを作っても、サーバーが止まれば使えません。
ネットワークにつながらなければ、サービスは利用できません。
セキュリティが破られれば、企業の信用や事業そのものに大きな損害が出ます。
いわば、ITサービスを表舞台で輝かせるための土台を支える仕事です。
世界経済フォーラムの2025年版レポートでも、今後重要性が高まるスキルとして、AI・ビッグデータに続き、ネットワークとサイバーセキュリティが挙げられています。
また、ネットワーク設計に関わる職種についても、今後の雇用増加が予測されています。
AIが普及すれば、AIを動かすためのクラウド、ネットワーク、データセンター、データ基盤、セキュリティも必要になります。
その意味では、インフラ分野は今後も一定の需要が期待できる領域です。
ただし、
インフラエンジニアならAIの影響を受けない、という意味ではありません。
監視、設定、障害検知、構成管理などの一部は、自動化やAIによって効率化されていきます。
単純な監視作業や、決められた手順を繰り返すだけでは、将来的に価値を上げにくくなる可能性があります。
インフラエンジニアを目指す場合も、
監視から運用へ。
運用から構築へ。
構築から設計へ。
さらにクラウド、セキュリティ、自動化へ。
というように、段階的にスキルを高める必要があります。
「開発は人気だから開発」
「インフラは入りやすそうだからインフラ」
と何となく決めるのではなく、
将来どのような技術を身につけ、どのようなエンジニアになりたいのかまで考えて選ぶことが大切です。
何となく応募すると、時間を無駄にします
エンジニア求人へ応募する前に、最低限、その職種について調べてください。
開発とインフラの違いが分からない。
プログラミングを一度も試したことがない。
ネットワークやサーバーが何かも分からない。
資格について調べたこともない。
それでも、
「未経験歓迎だから、とりあえず応募してみよう」
という状態では、なかなか採用されません。
仮に入社できたとしても、仕事が合わずに短期間で辞めてしまう可能性があります。
すると、せっかく転職したのに、
- 数カ月で退職する
- 職歴が一つ増える
- 次の転職で退職理由を聞かれる
- 自信を失う
- また未経験からやり直す
ということになりかねません。
転職活動を始める前に、数週間でも構いません。
実際に勉強してみてください。
コードを書いてみる。
Linuxを触ってみる。
資格の教材を読んでみる。
無料のクラウド環境を試してみる。
エンジニアの仕事内容を調べてみる。
そして、
「難しいけれど、もう少しやってみたい」
と思えるかを確認してください。
始める前に少し時間を使うことで、入社後に何カ月、何年という時間を無駄にする可能性を減らせます。
未経験者の多くが知っておくべき「SES」とは
未経験者向けのエンジニア求人を探していると、「SES」という言葉をよく目にします。
SESとは、一般的に企業へエンジニアの技術力を提供し、システム開発や運用・保守などを支援するサービスです。
働く場所は自社内とは限らず、取引先企業やプロジェクト先になることもあります。
そして、ここは誤解してほしくないのですが、
SES企業だから悪い会社、ということではありません。
未経験者を教育し、運用や保守などから経験を積ませ、資格取得やキャリアアップを支援している会社もあります。
未経験者にとって、SES企業への入社がエンジニアとしての入口になることも少なくありません。
一方で、「未経験者を育成する」という言葉を使いながら、実際には技術経験につながりにくい仕事を長期間続けさせる会社も存在します。
問題なのは、SESという仕組みそのものではありません。
入社後に、どのような仕事と教育環境が用意されているかです。
未経験エンジニア求人の5つの落とし穴
落とし穴①
エンジニア採用なのに、実際は別の仕事から始まる
求人には「未経験からITエンジニアへ」と書かれていたのに、入社後は家電量販店での販売、携帯電話の案内、コールセンター、テレアポなどを担当するケースがあります。
もちろん、接客や電話対応の経験そのものが無駄なわけではありません。
コミュニケーション能力は、エンジニアにも必要です。
問題は、
その仕事をいつまで続けるのかが決まっておらず、技術職へ移れる保証もないことです。
「まずは社会人経験を積みましょう」
「コミュニケーション力を身につけましょう」
と言われ、気づけば半年、1年、2年。
エンジニアになるために転職したのに、技術経験がほとんど積めていない。
それでは、何のために転職したのか分かりません。
落とし穴②
「研修あり」と書いてあるが、ほぼ自習
求人票に「充実した研修」「未経験でも安心」と書いてあると、会社が一から丁寧に教えてくれるように感じます。
しかし、研修内容は企業によって大きく異なります。
- 動画教材を見るだけ
- 市販の教材を渡されるだけ
- 質問できる講師がいない
- 通常業務終了後に自分で勉強する
- 週に一度しか研修がない
- 研修期間や到達目標が決まっていない
このような内容でも、「研修あり」と書かれていることがあります。
そして、ここでも大切なのは、
研修があるから、自分は何もしなくてよいわけではない
ということです。
どれだけ研修制度が整っていても、本人が復習も予習もせず、分からないことを調べなければ成長しません。
良い研修と本人の努力。
両方がそろって、初めて技術が身につきます。
落とし穴③
希望を聞かれないまま、案件が決まる
SES企業では、入社後にプロジェクトへ配属されることがあります。
会社の取引状況や本人のスキルによっては、すべての希望が通るわけではありません。
未経験者がいきなり、
「高年収で、開発だけを担当して、残業なし、フルリモートがいいです」
と希望しても、現実的にはかなり難しいでしょう。
最初は監視、運用、保守、テスト、ヘルプデスクなどから始めることもあります。
それ自体は悪いことではありません。
問題は、
なぜその仕事を経験するのか、次にどこを目指すのかという説明がないことです。
良い会社であれば、
「まずは運用業務でシステムの基礎を学び、資格を取得した後、構築業務を目指しましょう」
と、次のキャリアまで一緒に考えてくれます。
注意したい会社は、
「今空いているから、とりあえずここへ行ってください」
で終わります。
落とし穴④
経験やスキルを実際以上に書くよう求められる
SESでは、プロジェクトへ参加する前に、自分の経験やスキルをまとめた「スキルシート」を提出することがあります。
そこで、
「この経験をやったことにしておこう」
「研修で触っただけだけど、実務経験として書こう」
「経験年数を少し長くしておこう」
と提案された場合は、注意が必要です。
実際よりも経験を大きく見せて案件に入っても、現場で困るのは本人です。
求められる仕事ができなければ、毎日分からないことだらけになり、精神的にも追い込まれます。
「この業界では普通だから」
と言われたとしても、普通ではありません。
未経験は恥ではありません。
未経験であることを隠して、経験者として現場に入る方がはるかに危険です。
落とし穴⑤
内定後も入社日が決まらない
内定を承諾したにもかかわらず、
「案件が決まってから入社日を決めます」
と言われるケースがあります。
案件の開始日に合わせて入社日を調整すること自体はあります。
しかし、現職を退職した後も入社日が確定せず、無収入の期間が長引けば、生活に直結する重大な問題になります。
「内定が出たから安心」と思い、すぐに現在の会社を辞めるのではなく、雇用開始日や給与の発生時期をきちんと確認する必要があります。
最初から高年収・開発・フルリモートを全部求めない
少し厳しい話をします。
未経験の状態で、
「給料は高い方がいい」
「開発エンジニア以外は嫌です」
「残業はしたくありません」
「研修は会社に全部やってほしいです」
「資格の勉強は入社後にします」
「できればフルリモートがいいです」
と、すべてを求めても、企業側があなたを採用する理由はほとんどありません。
企業からすると、
「では、あなたを採用するメリットは何でしょうか」
という話になります。
未経験からの転職で大切なのは、最初からすべての条件を手に入れることではありません。
1年後、2年後に、何ができるようになっているかです。
最初の年収が少し高くても、技術経験が積めなければ、その後のキャリアは伸びにくくなります。
一方、最初の待遇が完璧ではなくても、実務経験と資格を積める会社であれば、数年後の選択肢は大きく広がります。
今の条件だけでなく、将来の市場価値まで考えて会社を選びましょう。
求人を横流ししない理由
求人サイトで検索すれば、「未経験歓迎」のIT求人はたくさん出てきます。
しかし、求人票だけでは分からないこともたくさんあります。
- 実際の研修内容
- 最初の配属先
- 未経験者の育成実績
- エンジニア以外の仕事をする可能性
- 待機中の待遇
- 案件の決め方
- 入社後のキャリア
- 開発とインフラのどちらが向いているか
- 将来につながる技術を習得できるか
だから、求人を見つけて、そのまま候補者へ送るだけの支援はしません。
その人が、なぜエンジニアになりたいのか。
現在、何を勉強しているのか。
本当にIT分野へ興味を持っているのか。
開発とインフラのどちらが向いているのか。
現実的に狙える企業はどこなのか。
入社後、どのような順番で経験を積むべきなのか。
そこまで一緒に考えます。
また、現時点で何も勉強しておらず、
「未経験歓迎なら、会社が全部教えてくれると思っていました」
という方に、無理に求人を紹介することはありません。
今すぐ応募するよりも、まず勉強を始めた方がよい場合は、正直にそう伝えます。
その方が、結果として本人の時間を無駄にせずに済むからです。
耳ざわりの良い言葉だけを伝えることが、転職支援ではありません。
難しいことは難しいと伝える。
準備が足りないなら、今は準備する期間だと伝える。
開発だけでなく、インフラという選択肢も伝える。
AIによって仕事内容が変わる可能性まで考える。
そのうえで、可能性を最大限に広げる道を一緒に探す。
それが、私たちの転職支援です。
最後に
未経験からエンジニアになることは、不可能ではありません。
年齢、学歴、職歴だけで、すべてが決まるわけでもありません。
しかし、
「未経験歓迎」と「何も準備しなくてよい」は、まったく違います。
実務経験がなくても、勉強はできます。
資格の教材を読むこともできます。
コードを書くこともできます。
Linuxを触ることもできます。
クラウドを試すこともできます。
IT業界について調べることもできます。
そこまで取り組んだうえで、
「まだ仕事としての経験はありません」
という人が、本当の意味で企業が採用したい未経験者です。
そして、エンジニアになった後の世界も変化しています。
開発エンジニアを目指すのであれば、AIを使いこなす力が必要になります。
インフラエンジニアを目指すのであれば、監視だけで終わらず、クラウド、構築、設計、セキュリティ、自動化へ進む必要があります。
どちらを選べば絶対に安泰、という仕事はありません。
大切なのは、
興味を持てる分野を選び、継続して学び、市場から必要とされる力を身につけることです。
何となく応募して、何となく入社して、数カ月で辞める。
それでは、時間も職歴も無駄になってしまいます。
応募する前に調べる。
少しでも勉強してみる。
自分に合うか確かめる。
将来性まで考えて職種を選ぶ。
そして、本当に技術経験を積める会社へ入る。
未経験は、弱点ではありません。
しかし、何も行動していないことを正当化する言葉でもありません。
本気で人生を変えたいのであれば、まず自分から一歩を踏み出してください。
私たちは、その一歩を踏み出した人と一緒に、
単に入社できる会社ではなく、入社後に成長できる会社を探します。

