「人事になりたいです」の前に読んでほしい。未経験から人事を目指す人が知らない、採用の現実

転職相談をしていると、かなりの頻度で出てくる希望職種があります。

「人事に挑戦したいです」

「採用の仕事に興味があります」

「人と関わる仕事が向いていると思います」

人事は人気があります。

会社の顔として説明会に登壇し、応募者と面接をして、内定を伝える。社員のキャリア相談に乗り、研修を企画し、組織をより良くしていく。

たしかに、華やかに見える仕事です。

しかし、人事になりたい人に最初に知っておいてほしいことがあります。

人事は、「人と話すのが好き」という理由だけで採用される仕事ではありません。

そして、人事への入り方は、大きく分けて二つあります。

  • 新卒で入社し、人事に配属される
  • 別の仕事を経験した後、中途採用で人事へ転職する

同じ「人事になる」でも、この二つはほとんど別競技です。

新卒採用が甲子園なら、中途採用は即戦力を集めるプロ野球のトライアウトです。

応募方法も、企業が見るポイントも、用意すべき武器も違います。

今回は、これから人事を目指す人に向けて、少し耳の痛い現実も含めて、正直にお伝えします。


そもそも「人事」とは、何をする仕事なのか

「人事をやりたいです」と話す方に、

「人事の何をやりたいですか?」

と質問すると、答えに詰まることがあります。

人事と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは採用です。

しかし、人事の仕事は採用だけではありません。

代表的な業務には、次のようなものがあります。

採用

新卒採用、中途採用、アルバイト採用などを担当します。

採用計画を立て、求人媒体や人材紹介会社を選び、求人票を作成し、応募者を集めます。

その後も、

  • 書類選考
  • 面接の日程調整
  • 面接
  • 現場責任者との連携
  • 内定通知
  • 条件交渉
  • 入社までのフォロー
  • 入社後の定着支援

など、業務は多岐にわたります。

「面接室で候補者と楽しくお話しする仕事」ではありません。

採用目標に対して人数が足りなければ、立派な未達です。

人事も、普通に数字を追います。


労務

勤怠管理、給与計算、社会保険、入退社手続き、産休・育休、休職・復職、労働時間管理などを担当します。

社員から見れば、

「給与が振り込まれていて当然」

「保険証が使えて当然」

「入社手続きが終わっていて当然」

という仕事です。

正常に処理できても、なかなか拍手は起こりません。

一方、給与計算を一桁間違えれば、一気に主役になります。

ただし、誰も望んでいない形で。

正確性と法律知識、守秘義務への高い意識が求められる仕事です。


人材育成・研修

新入社員研修、管理職研修、営業研修、コンプライアンス研修などを企画・運営します。

人前で話すだけではなく、

  • 会社の課題を分析する
  • 必要な能力を定義する
  • 研修内容を設計する
  • 外部講師を選定する
  • 参加者や上司と調整する
  • 研修後の効果を測定する

ところまでが仕事です。

「研修を開催しました」で終わるのではなく、現場が変わったか、成果につながったかまで見られます。


人事制度・評価制度

等級、役職、給与、評価、昇進などの仕組みを設計・運用します。

社員にとって非常に関心が高い領域です。

どれほど丁寧に制度を設計しても、

「なぜ自分の評価はこれなんですか」

「隣の部署との基準が違いませんか」

「この制度、誰が得するんですか」

という質問が飛んできます。

経営側の意図と、社員側の納得感。その間で調整する仕事です。


人事企画・組織開発・HRBP

会社の経営戦略や事業計画に合わせて、どのような人材を採用し、育て、配置するかを考えます。

離職率、従業員満足度、生産性、管理職育成、後継者育成など、組織全体の課題に関わります。

人事のなかでも、特に経営に近い仕事です。

つまり、人事とは単に「人と接する部署」ではありません。

人と組織に関する問題を、数字、法律、制度、コミュニケーションを使って解決する仕事です。

実際、人事には採用、労務、人材育成、制度・評価、組織開発など幅広い領域があり、求められる知識や経験も異なります。


人事への入り方① 新卒で人事に配属される

まずは、新卒で人事になるパターンです。

大学や専門学校を卒業し、企業に新卒で入社して、人事部に配属されます。

未経験なのに人事になれるのですから、中途採用から見るとうらやましいルートです。

ただし、ここには大きな注意点があります。

新卒採用は「人事職採用」とは限らない

企業の新卒採用には、大きく分けて二つの形式があります。

職種別採用

最初から、

  • 人事職
  • 経理職
  • エンジニア職
  • 営業職

など、職種を限定して採用する方法です。

この場合、人事職として採用されれば、基本的には人事部門でキャリアを始めます。

ただし、人事職限定の新卒求人は、総合職採用と比べると多くありません。

また、少ない募集枠に応募が集まりやすいため、簡単な道ではありません。


総合職採用

入社時点では職種を限定せず、研修後や会社の判断によって配属先が決まる方法です。

本人は人事を希望していても、

「配属は営業です」

「まずは店舗勤務です」

「現場を経験してもらいます」

となることがあります。

ここで、

「人事を希望していたのに話が違う」

と落ち込む人もいます。

しかし、会社側からすると、人事が現場を知らずに採用や制度設計をすることにもリスクがあります。

営業社員を採用するのに、営業現場をまったく知らない。

店舗スタッフの研修を作るのに、店舗に立ったことがない。

製造現場の評価制度を作るのに、工場の仕事を知らない。

これでは、会議室では完璧でも、現場ではまったく使えない制度が完成する可能性があります。

そのため、新卒社員をいったん営業や現場に配属し、数年後に人事へ異動させる企業もあります。

新卒から人事を目指す場合は、

最初から人事に配属されるケースだけでなく、社内異動で人事へ進むケースもある

と理解しておく必要があります。


新卒で人事に配属されやすい人

新卒採用では、当然ながら人事経験を持っている学生はほとんどいません。

そのため、企業は経験よりも、次のような要素を見ます。

  • 論理的に話せる
  • 相手の話を正確に理解できる
  • 周囲と調整できる
  • 秘密を守れる
  • 感情だけで判断しない
  • 文章を正確に作れる
  • 地道な事務作業も苦にならない
  • 人や組織への関心がある
  • 会社や事業への理解がある

学生時代に、

「サークルで新入生の勧誘を担当しました」

「アルバイト先で新人教育をしました」

「学生団体の採用面接を担当しました」

という経験があれば、一定のアピール材料になります。

ただし、企業が見ているのは「人と関わった経験」だけではありません。

その経験を通じて、

  • どんな課題があったのか
  • 自分は何を考えたのか
  • 周囲をどう巻き込んだのか
  • 結果はどうなったのか
  • そこから何を学んだのか

まで説明できる必要があります。

「人が好きです」だけでは、少し弱い。

人事部には、だいたい人が好きな人が応募してきます。

そのなかで「では、あなたを選ぶ理由は何ですか」という話になります。


新卒で人事になれなかったら、もう終わりなのか

まったく終わりではありません。

むしろ、新卒で営業や店舗、カスタマーサポートなどを経験した後、社内異動で人事へ進む人もいます。

例えば営業を経験すると、

  • 売上がどのように作られるか
  • 現場がどんな人材を必要としているか
  • 目標を追う苦しさ
  • 上司と部下の関係
  • 顧客対応の難しさ

が分かります。

この経験は、採用や研修を担当するときに大きな武器になります。

営業経験のない人事が作った求人票よりも、実際に営業を経験した人事が作った求人票のほうが、仕事の現実を具体的に伝えられることがあります。

新卒から人事になることだけが正解ではありません。

現場経験を積んでから人事へ異動することも、非常に価値のあるルートです。


人事への入り方② 中途採用で人事へ転職する

次は、すでに社会人として働いている人が、中途採用で人事を目指すパターンです。

こちらは新卒採用とは見られるポイントが大きく異なります。

新卒採用では、

「将来、活躍してくれそうか」

という可能性が重視されます。

一方、中途採用では、

「入社後、何を任せられるのか」

が重視されます。

可能性だけではなく、再現性が求められます。

企業は、これまでの経験を見ながら、

「この人を採用したら、採用人数を増やせるか」

「給与計算を正確に回せるか」

「現場責任者と調整できるか」

「制度の運用を任せられるか」

を判断します。

中途採用は、社会人版のポテンシャル大会ではありません。

基本的には、

あなたは、これまで何をしてきて、その経験を人事でどう使えるのですか

という勝負です。


なぜ未経験からの人事転職は難しいのか

未経験から人事になることは不可能ではありません。

ただし、簡単ではありません。

理由は主に三つあります。

1.募集人数が多くない

営業職や販売職、ITエンジニアなどは、事業拡大に合わせて複数人を採用することがあります。

一方、人事部門は、会社全体の人数に対して少人数で運営されていることが一般的です。

営業を10人採用する会社でも、人事は1人しか募集しないことがあります。

応募者から見ると一つの求人ですが、採用枠は一席です。

イス取りゲームで、イスが最初から一つしかありません。

しかも音楽が止まった瞬間、横には経験者が立っています。


2.経験者も同じ求人に応募してくる

「未経験歓迎」と書かれていても、応募者が未経験者だけとは限りません。

そこには、

  • 採用アシスタント経験者
  • 人材紹介会社の営業経験者
  • キャリアアドバイザー経験者
  • 求人広告営業の経験者
  • 店長としてアルバイト採用をしていた人
  • 営業として高い成果を出した人
  • すでに採用実務を経験している人

も応募してきます。

企業が「未経験者でも応募可能」と書くことと、最終的に未経験者を選ぶことは別問題です。

dodaも、人事は募集枠が少なく、専門知識や組織間の調整力が必要なため、未経験転職が難しい面があると説明しています。


3.人事は失敗の影響が大きい

人事は、会社の未来に関わる仕事です。

採用担当がミスマッチを繰り返せば、採用費、教育費、人件費、現場の負担が増えます。

労務担当が手続きを誤れば、社員の生活や会社の信用に影響します。

評価制度の設計を誤れば、優秀な社員が辞めてしまうかもしれません。

そのため、企業が慎重になるのは当然です。

人事の仕事は、誰かの人生や給与、評価、退職、健康状態など、非常に重要で機密性の高い情報を扱います。

「人と話すのが好きだから、一度やってみたいです」

だけで任せるには、会社側のリスクが大きいのです。


「未経験歓迎」の正しい意味

求人票に書かれている、

「人事未経験歓迎」

という言葉。

これは、

「社会人経験がほとんどなくても大丈夫です」

「何の実績もなくても、人柄だけで採用します」

という意味ではありません。

多くの場合は、

人事の経験はなくても、別の仕事で人事に生かせる経験があれば検討します

という意味です。

ここを読み違えてはいけません。

例えば採用担当であれば、次のような経験が評価されやすくなります。

  • 営業で数字を追った経験
  • 顧客との折衝経験
  • 人材紹介や求人広告の経験
  • 店長として採用や教育を担当した経験
  • チームリーダーとして部下を育成した経験
  • 社内外の関係者を調整した経験
  • 業務改善を行った経験
  • 採用広報やSNS運用の経験
  • データを分析して施策を改善した経験

2026年下半期の人事転職市場についても、未経験採用は一部で見られるものの、採用職では採用への理解やコンサルティング型営業の経験などが評価されやすいとされています。

つまり、

「人事をやったことがない=何も持っていない」

ではありません。

これまでの仕事のなかから、人事に転用できる経験を見つけることが重要です。


中途から人事を目指す、代表的なルート

ここからは、未経験者が中途から人事へ進む現実的なルートを紹介します。

ルート1 営業から採用人事へ

営業と採用は、意外なほど共通点があります。

営業では、

  • 顧客の課題を聞く
  • 相手に合った提案をする
  • 自社の魅力を伝える
  • 競合と比較される
  • 条件を調整する
  • 契約までフォローする
  • 数字を分析して改善する

という仕事をします。

採用も同じです。

  • 候補者の希望を聞く
  • 会社の魅力を伝える
  • 他社と比較される
  • 配属先や条件を調整する
  • 入社までフォローする
  • 採用数や歩留まりを分析する

商品がサービスから会社に変わり、顧客が求職者に変わっただけで、似ている部分があります。

優秀な採用担当には、候補者を見極める力だけでなく、

「この会社に入りたい」

と思ってもらう力が必要です。

採用は、待っているだけの事務職ではありません。

会社を売り込む営業でもあります。


ルート2 人材紹介会社から事業会社の人事へ

人材紹介会社のキャリアアドバイザーや法人営業は、採用人事と非常に近い仕事です。

例えば、

  • 求職者との面談
  • 経歴や希望の整理
  • 求人の提案
  • 応募書類の確認
  • 面接対策
  • 企業との日程調整
  • 選考状況の管理
  • 内定後の意思決定支援
  • 入社までのフォロー

などを経験します。

企業側の採用担当から見ると、

「採用の流れを理解している」

「候補者が何を不安に感じるか分かっている」

「人材紹介会社との付き合い方を理解している」

という即戦力に近い評価ができます。

キャリアアドバイザーや人材業界の営業から採用人事へ進むルートは、遠回りに見えて、実際にはかなりまっすぐな道です。


ルート3 店長・SVから採用や教育担当へ

小売、飲食、サービス業などで、店長やSVを経験した人も人事との接点があります。

店長は、実質的に小さな会社の経営者です。

  • アルバイトの募集
  • 面接
  • 採用
  • シフト管理
  • 新人教育
  • 評価
  • 離職防止
  • 労務管理
  • 売上管理

を担当することがあります。

これらを数字と具体例で説明できれば、採用や教育担当への転職で評価される可能性があります。

ただし、職務経歴書に、

「店舗運営全般を担当」

としか書かなければ伝わりません。

例えば、

  • 年間何人を採用したか
  • 採用後の定着率はどうだったか
  • 新人が独り立ちするまでの期間をどれだけ短縮したか
  • 何人のスタッフを教育したか
  • 離職率をどれだけ改善したか

まで整理する必要があります。

仕事をしていた事実ではなく、何を変えたかが重要です。


ルート4 事務・総務から労務人事へ

事務職や総務職から、労務人事を目指すルートもあります。

特に、

  • 勤怠管理
  • 入退社書類
  • 給与関連データ
  • 社会保険手続きの補助
  • 社員からの問い合わせ対応
  • 個人情報管理
  • 規程や契約書の管理

などを経験している人は、労務との親和性があります。

採用人事では営業力や折衝力が評価されやすい一方、労務では正確性、継続力、法律知識、守秘義務への意識が重要になります。

同じ人事でも、求められるタイプは大きく異なります。


ルート5 人事アシスタントから実務経験を積む

未経験から直接、採用担当や人事企画を狙うのが難しい場合、人事アシスタントから始める方法もあります。

業務内容は、

  • 面接の日程調整
  • 応募者への連絡
  • 求人媒体の更新
  • 入社書類の準備
  • 採用データの集計
  • 社員情報の入力
  • 研修運営の補助

などです。

最初は補助業務でも、そこで採用や労務の流れを理解し、少しずつ担当範囲を広げれば、次の転職では「人事経験者」として応募できます。

ただし、注意点もあります。

何年間も日程調整だけを続けていると、次のキャリアにつながりにくくなることがあります。

入社後は、

「何を経験できるか」

「将来的に面接や採用計画にも関われるか」

「労務の専門業務を任せてもらえるか」

まで確認することが重要です。

未経験者向けの人事求人では、人事アシスタント、人事事務、労務補助などのサポート職が入り口になりやすいとされています。


人事を目指す人が、よく勘違いしていること

勘違い1 人と話すのが好きなら向いている

人事にコミュニケーション能力は必要です。

ただし、求められるのは、

「初対面の人と楽しく話せる力」

だけではありません。

本当に必要なのは、

  • 相手の話を正確に理解する
  • 必要な情報を引き出す
  • 事実と感情を分ける
  • 立場の違う人を調整する
  • 言いにくいことを伝える
  • 記録を残す
  • 秘密を守る

力です。

社員から退職相談を受けたときに、

「分かります。会社って大変ですよね」

と一緒に盛り上がることが人事の仕事ではありません。

共感しながらも、事実を整理し、会社として適切な対応を進める必要があります。


勘違い2 人事はノルマがない

採用人事には、普通に目標があります。

  • 採用人数
  • 応募数
  • 書類通過率
  • 面接設定率
  • 内定率
  • 内定承諾率
  • 採用単価
  • 入社後の定着率

などを管理します。

採用目標が30人で、入社したのが12人なら、

「候補者の人生に寄り添いました」

だけでは終われません。

優しく寄り添いながら、目標も達成する。

人事は、なかなか欲張りな職種です。


勘違い3 面接官になれば人を選べる

採用担当は、応募者を一方的に選ぶ立場ではありません。

優秀な候補者ほど、複数社から内定を受けます。

企業側も選ばれています。

面接中の態度、連絡の速さ、説明の分かりやすさ、条件の透明性、入社後のイメージ。

少しでも対応が悪ければ、候補者は別の会社へ行きます。

採用担当は「人を選ぶ人」というより、

会社と候補者がお互いを選べる状態を作る人

です。


勘違い4 資格を取れば人事になれる

人事になるために、必須資格はありません。

社労士、キャリアコンサルタント、人事総務検定、衛生管理者など、人事に関連する資格はあります。

学習意欲や基礎知識を示すうえでは役立ちます。

ただし、

「資格を取りました。実務経験はありません」

という人と、

「営業で目標達成率130%を達成し、5人の新人教育も担当しました」

という人が採用担当に応募した場合、後者が評価されることも十分あります。

資格は魔法の入場券ではありません。

実務経験を補強する材料です。

人事に必須資格はなく、資格だけで合否が決まることは少ないとされています。特に未経験者は、学んだ内容を仕事でどう生かすかまで説明する必要があります。


勘違い5 人事になれば高収入になれる

人事の年収は、担当領域、会社規模、役職、専門性によって大きく変わります。

採用アシスタント、給与計算、労務、研修、人事制度、HRBPでは、市場価値の作られ方が異なります。

単に「人事」という肩書を手に入れるだけでは、年収が大きく上がるとは限りません。

高い年収を目指すなら、

  • 採用戦略を設計できる
  • 難易度の高い職種を採用できる
  • マネジメントができる
  • 人事制度を設計できる
  • 労務問題を解決できる
  • 経営戦略と人材戦略をつなげられる
  • データを使って組織課題を改善できる

など、会社の経営や事業成長に近い能力が必要になります。

人事になることをゴールにしてはいけません。

どの領域で、どのような価値を出せる人事になるのか。

そこまで考えることが大切です。


人事に向いている人、向いていない人

人事に向いている人

人事に向いているのは、単に人が好きな人ではありません。

例えば、次のような人です。

  • 人に関心があるが、感情だけで判断しない
  • 相手の立場と会社の立場を両方考えられる
  • 口が堅い
  • 地道な作業を正確に続けられる
  • 数字やデータを見ることに抵抗がない
  • 問題が起きたときに冷静に対応できる
  • 言いにくいことも丁寧に伝えられる
  • 現場と経営の間に入って調整できる
  • 自分が目立つより、組織の成果を優先できる
  • 法律や制度を継続的に学べる

人事に向いていない可能性がある人

一方で、次のような考えだけで人事を希望している場合は、少し立ち止まったほうがよいかもしれません。

  • 営業の数字から逃げたい
  • 事務職より人事のほうが華やかに見える
  • 人と話すのが好きだから向いていると思う
  • 面接官という立場に憧れている
  • 人の相談に乗ることだけをしたい
  • 自分は人を見る目があると思っている
  • 人事なら残業が少なそう
  • 人事ならノルマがなさそう

人事には、人の良い面だけでなく、難しい面にも向き合う場面があります。

評価、異動、休職、退職、ハラスメント、給与、懲戒。

ときには、社員から感謝されない判断にも関わります。

「人が好き」だけでは続きません。

人と組織の問題から逃げずに向き合えるか。

それが人事への適性です。


中途から人事を目指す人が、今の職場で作るべき実績

人事に転職したいからといって、すぐに退職する必要はありません。

今の職場でも、人事につながる経験は作れます。

例えば、

  • 新人教育を任せてもらう
  • 面接に同席する
  • アルバイト採用を担当する
  • マニュアルを作成する
  • チームの離職防止に取り組む
  • 業務改善を提案する
  • 社内研修を担当する
  • メンバーとの1on1を行う
  • 採用イベントに参加する
  • 社内の採用紹介制度に協力する
  • 勤怠やシフト管理を担当する
  • ExcelやAIを使って集計を効率化する

といった経験です。

重要なのは、それを数字で残すことです。

「新人教育を担当しました」

だけでなく、

「新人8名を教育し、独り立ちまでの期間を平均3カ月から2カ月へ短縮した」

と説明できれば、評価は変わります。

「業務改善をしました」

だけでなく、

「面接日程の管理方法を見直し、調整時間を月20時間削減した」

と説明できれば、採用業務とのつながりが見えます。

人事を目指すなら、今の仕事を捨てるのではありません。

今の仕事を、人事につながる経験へ変換するのです。

もともとの面談資料でも、直接応募が難しい場合に、営業やキャリアアドバイザーなどで「数字で語れる実績」を作ってから人事へ進むルートを提案していました。


年齢別に考える、人事への入り方

20代前半

20代前半であれば、ポテンシャル採用の対象になる可能性があります。

人事アシスタント、採用担当、人材紹介会社、求人広告営業など、複数のルートを検討できます。

ただし、「若いから未経験でも大丈夫」と考え、準備なしで応募を続けるのは危険です。

若さは武器ですが、応募者全員が若ければ差になりません。

営業実績、新人教育、業務改善、学生時代の採用活動など、人事との接点を言語化しましょう。


20代後半

20代後半になると、ポテンシャルだけでなく、社会人としての実績も見られます。

この年代では、

  • 営業成績
  • リーダー経験
  • 新人教育
  • 採用への関与
  • 社内調整
  • 業務改善
  • 数字を使った成果

などが重要です。

人材紹介、求人広告、採用代行など、採用に近い仕事を一度挟む選択も有効です。


30代

30代の未経験転職では、企業から「これまでの経験を人事でどう再現できるか」を厳しく見られます。

単に、

「以前から人事に興味がありました」

では弱くなります。

  • 営業マネージャーとして採用と育成を担当した
  • 店長として年間20名を採用した
  • 管理職として離職率を改善した
  • 業務フローを作り直した
  • 人材業界で企業の採用支援をした

など、人事に近い経験が必要です。

場合によっては、年収や役職を一度下げて人事へ入る覚悟も必要になります。


40代以降

40代以降で完全未経験から人事へ転職するのは、さらに難易度が上がります。

企業は40代の中途採用者に対して、実務だけでなく、専門性やマネジメントを期待することが多いからです。

しかし、可能性がゼロではありません。

例えば、

  • 営業部長として数十名の採用・育成・評価をしてきた
  • 店舗統括として組織改善をしてきた
  • 経営者として採用や労務を経験した
  • 業界の専門知識を持ち、専門職採用に生かせる
  • 研修講師として人材育成の実績がある

など、これまでのキャリアを人事に接続できる場合があります。

この年代では、若手と同じ求人に正面から応募するよりも、

  • 採用責任者候補
  • 研修・教育担当
  • 業界特化型の採用担当
  • 人材紹介会社
  • 採用コンサルタント
  • 組織開発支援

など、過去の経験が生きるポジションを狙うことが重要です。


人事に行きたい人へ伝えたい、本当のこと

人事を目指すこと自体は、まったく悪くありません。

人と組織の可能性を広げる、素晴らしい仕事です。

ただし、人事という言葉のイメージだけで転職活動を始めると、書類選考で落ち続ける可能性があります。

そして、落ち続けた結果、

「自分には価値がない」

と思ってしまう人がいます。

違います。

価値がないのではありません。

今の経験と、応募している求人の間に橋が架かっていないだけです。

新卒から人事に入る人には、新卒なりのルートがあります。

現場を経験して、社内異動で人事へ進む人もいます。

中途から人事に入る人には、営業、人材紹介、店舗運営、教育、総務、労務補助などの経験を経由するルートがあります。

人事というゴールを諦める必要はありません。

ただし、ゴールへ向かう道は一つではありません。


遠回りに見える道が、人事への最短ルートになる

「人事になりたいのに、どうして営業を勧められるのですか」

「採用をしたいのに、なぜ人材紹介会社なのですか」

そう思う人もいるでしょう。

しかし、営業で相手の本音を引き出し、数字を追い、提案し、契約まで導いた経験は、採用で大きな武器になります。

人材紹介会社で何百人もの転職希望者と向き合った経験は、事業会社の採用でも生きます。

店長として人を採用し、育て、辞めない組織を作った経験は、人事そのものです。

経路が違うだけで、ゴールにはつながっています。

むしろ、現場の苦労を知らずに人事になった人よりも、営業、店舗、顧客対応、マネジメントを経験した人のほうが、社員や応募者の気持ちを深く理解できることがあります。

人事になることだけを考えれば、遠回りに見えるかもしれません。

しかし、

活躍できる人事になることを考えれば、その経験は遠回りではありません。


最後に――人事になりたいのか、人事として価値を出したいのか

「人事になりたい」

その気持ちは、大切にしてほしいと思います。

ただ、肩書だけを手に入れることをゴールにしてはいけません。

採用担当という名刺を持っていても、採用できなければ会社には貢献できません。

研修担当になっても、研修後に社員が変わらなければ意味がありません。

労務担当になっても、正確な処理と適切な対応ができなければ、社員を守れません。

目指すべきなのは、

人事になることではなく、人事として会社と社員の役に立てる人になることです。

新卒で人事へ入る。

現場を経験して社内異動する。

営業から採用へ進む。

人材紹介会社を経由する。

店長経験を採用や教育に生かす。

事務や総務から労務へ進む。

入り口は一つではありません。

夢を変える必要はありません。

変えるべきなのは、夢にたどり着くまでのルートかもしれません。

人事になりたいのであれば、まず自分に問いかけてみてください。

「私は人事の何をしたいのか」

「今の経験の何が人事に生かせるのか」

「足りない経験を、次の仕事でどう作るのか」

この三つに具体的に答えられたとき、人事への転職は、単なる憧れから現実的なキャリアプランへ変わります。

人事への道は、一本道ではありません。

だからこそ、今いる場所から、最も勝てる道を選んでください。