【研修だけでは変わらない理由】組織を動かすのは“思い込み”の手放し

固定観念の壁を越えるために、研修でできること

「変わりたいのに、変われない」
「変えていきたいのに、うまくいかない」

これは、多くの企業や個人が直面する本質的な課題です。

働き方改革、DX、心理的安全性、人的資本経営──世の中はこれだけ変化しているのに、なぜ、組織や人の中には「変われないまま」の状態が残り続けるのでしょうか?

その原因は一言で言えば「固定観念(思い込み)」です。


変化を阻む最大の壁──固定観念とは?

固定観念とは、過去の経験や常識に基づいて「こうあるべき」「こうすべき」と無意識に決めつけてしまう思考の枠組みです。

たとえば…

  • 「部下は指示を待つものだ」
  • 「会社とは我慢して勤める場所だ」
  • 「自分はプレゼンが苦手だから無理だ」
  • 「この業界では仕方ない」

これらは全て「固定観念」の表れです。

問題は、これらが“事実”のように脳に根付き、「挑戦」や「変化」を未然にシャットアウトしてしまう点にあります。


なぜ研修をしても変化しないのか?

多くの企業が、「行動が変わらない」「成果に結びつかない」という課題を抱えています。何度も研修を実施しても、なぜ人は変わらないのか?

それは、スキルや知識以前に、「ものの見方」が変わっていないからです。

いくら外側にノウハウを足しても、内側の固定観念というフィルターを通して物事を見る限り、人は元の枠組みに戻ろうとします。

まるで、曇ったレンズを通して世界を見ているようなもの。
このレンズ(=固定観念)を外さない限り、見える世界は変わらないのです。


「気づき」なくして行動変容なし

人が本当に変わる瞬間とは、知識を得たときではなく、「自分の思い込みに気づいたとき」です。

たとえばこんな言葉を研修中に耳にしたとします。

「部下が育たないのは、あなたの管理が厳しすぎるせいかもしれませんよ」

この一言に、怒る人もいれば、はっとする人もいます。
後者は、自分の「当たり前」にひびが入った瞬間です。

この「気づき」が生まれると、人は初めて“変化する余地”を得ます。
研修の本質は、知識の詰め込みではなく、**「気づきの設計」**にこそあるのです。


固定観念の解体は、個人と組織の変化を同時に促す

個人の変容と組織の変容は、別のものではありません。

たとえば、

  1. 「自分が変わらなきゃいけない」という気づきを得たマネージャーが
  2. 「部下の話を聴く」という行動に変わり
  3. 「チームに安心感」が生まれ
  4. 「意見やアイデアが自然に出る風土」へと進化する

このように、たった一人の固定観念の解体が、組織文化に波紋のように広がっていくのです。


研修で行うべきは、「枠組み」そのものへのアプローチ

人は、自分の内側にある「物語」に支配されています。

  • 「失敗すると評価が下がる」
  • 「どうせ変えても無駄だ」
  • 「若手は甘やかすとつけあがる」

これらの物語を、ワークや対話、問いかけによって揺さぶり、新しい視点を渡す。

この設計を丁寧に行うことで、人は「今の自分の見方」を手放し、変化に向かって一歩踏み出すことができます。


心を揺らす“体験”こそが、人を動かす

固定観念を溶かすには、ロジックだけでは足りません。
感情を伴う「体験」が必要です。

  • ワークショップでのロールプレイ
  • 実話をもとにしたストーリーテリング
  • 自分の価値観に気づくエクササイズ
  • 他者の視点を取り入れるフィードバックセッション

こうした体験を通じて、「ああ、自分にもまだ変われる余地があったんだ」と心が動いたとき、人は自然に行動を変えていきます。


結局、人と組織が変わる条件とは?

変化には以下の3つが必要です。

  1. 気づき(Awareness):自分の思い込みに気づく
  2. 共感(Empathy):他者や目的とのつながりを感じる
  3. 実践(Action):小さく試し、成功体験を得る

このサイクルが回り始めたとき、人も組織も、静かに、でも確かに変わり始めます。


最後に──「変われる組織」には共通点がある

私たちがこれまで組織変革に関わってきた中で、確信していることがあります。

それは、「変化する組織には、変化を許容する土壌がある」ということです。

  • 上司がまず自分の弱さを見せる
  • 「正解」より「問い」を大事にする
  • 変わらない人を責めず、寄り添う文化がある

こうした組織風土があると、変化はスムーズに起こります。逆に、どれだけ優れた研修プログラムも、土壌が固ければ根付きません。


変化の第一歩は、「思い込みを手放すこと」から

「変わらない」のではなく、「変われない理由」がある。
それが、固定観念です。

そしてその壁は、ほんの少しの気づきで、想像以上にあっさりと崩れ始めます。

だからこそ、私たちは研修の場で「答え」を教えるのではなく、
「自分で自分に問いを立てられる状態」へ導くことを大切にしています。

その先にこそ、人と組織が本当に変わる未来があります。