【禍を転じて福となる】― コーチングで逆境を成長に変える力


誰にでも「禍」は訪れる

どんなに前向きで、どんなに運の良い人でも、人生において「禍(わざわい)」は避けられません。
むしろ、運の良い人ほど行動量が多く、挑戦の数も多いため、その分トラブルに出会う確率も高いのです。

行動すれば、必ず思わぬ出来事や失敗は訪れます。

  • 商談が急に白紙になる
  • 人間関係で誤解を招く
  • 自分の想定外の出来事が起こる

しかし、その時にどう対応するかで人生は大きく分かれます。
諦める人と、諦めない人
責める人と、許す人
この違いが、その後の人生やキャリアの結果を決めていくのです。


禍と福は紙一重

「禍」という漢字と「福」という漢字。
実は字形も似ています。
まるで、禍と福は紙一重であることを暗示しているかのようです。

一見すると「最悪!」と思える出来事も、解釈と行動次第で“福”に変わることがあります。
そしてこの変換力こそ、コーチングでクライアントが身につけるべき大切な力の一つです。


きゅうり100箱事件

ある自然食品店を経営する方がいました。
ある日、パートスタッフが発注を間違え、なんと「きゅうり100箱」を注文してしまったのです。
店は天井まできゅうり。どう見ても“禍”です。

経営者は怒鳴りませんでした。
責めても解決しないし、きゅうりは生ものです。
彼は冷静に、まず大安売りを決行。
しかし、さすがにきゅうりはそう簡単には売れません。

次に彼は全営業スタッフを集め、お得意様に20本ずつプレゼントすることを決定。
結果、きゅうりは全てなくなり、しかもその月の売り上げは大幅アップ。
お客様が「突然のプレゼント」に感激し、リピート注文が増えたからです。

もし経営者がパートさんを責めていたらどうでしょうか?

  • スタッフの士気は下がり
  • 顧客との関係は変わらず
  • きゅうりは廃棄
    まさに“禍のまま”終わっていたはずです。

禍は勝手に福にはならない

ここで大切な教訓があります。
禍は、放置していても福には転じません。
「いつか自然に良い方向に変わるだろう」と何もせず待っていても、事態はただ過ぎ去るだけです。

禍を福に変えるのは、意図的な解釈と行動です。
言い換えると、**“禍こそが福の種”**という発想を持ち、そこから学び、行動を変える力こそが必要なのです。


コーチングでクライアントに伝える3つの行動

コーチとしてクライアントに関わるとき、逆境を乗り越える力を育むために特に大切な3つの行動があります。

1. 諦めない

失敗やトラブルは一見すると「終わり」に見えます。
しかし、諦めない人だけが次の一手を見つけます
コーチは質問を通じて、クライアントが次に進む可能性を見つけられるよう支援します。

  • 「この状況から、どんな学びが得られますか?」
  • 「この経験を次に活かすとしたら、どんな行動をしますか?」

2. 責めない

失敗が起こったとき、人は自分や他人を責めがちです。
しかし責めることにエネルギーを使っても、未来は変わりません。
責める代わりに許すことが、行動するエネルギーを取り戻します。

コーチは、

  • 「この経験を責めるのではなく、受け止めたら何が見えてきますか?」
  • 「もし誰も責めないとしたら、次にどんな一歩が踏み出せますか?」
    と問いかけ、エネルギーの向きを変えます。

3. 足を止めない

逆境で立ち止まると、その間に恐れや不安が大きくなります。
小さくてもいいので、一歩でも動き続けることが重要です。
コーチは具体的な小さな行動を引き出す質問をします。

  • 「今日すぐにできる一歩は何でしょう?」
  • 「今ある資源でできることは何ですか?」

コーチングでの実践質問例

禍を福に変えるために、コーチがクライアントに問いかけられる質問をまとめます。

  • 「この出来事から得られる価値は何ですか?」
  • 「もしこれをきっかけにできることがあるとしたら?」
  • 「この経験を未来で語るとしたら、どんな成功ストーリーになりますか?」
  • 「この状況を誰かに感謝できる形に変えるとしたら?」

質問によって、クライアントは被害者意識から主体者意識に切り替わり、自分で行動を選び、未来をつくる力を取り戻します。


クライアントが逆境を乗り越えた時に生まれるもの

コーチングでクライアントが禍を福に変えた時、そこには共通する成果があります。

  1. レジリエンス(回復力)が高まる
    次の困難に対しても柔軟に対応できる力がつきます。
  2. 自己効力感が向上する
    「私はやればできる」という感覚が強まり、自信を持って挑戦できるようになります。
  3. 周囲との関係性が深まる
    困難を乗り越える過程で、人への感謝や信頼が強まり、人間関係も良くなります。

まとめ:禍こそが福の種

禍は避けられない。
しかし、諦めない・責めない・足を止めないという選択ができれば、禍は必ず福に変わります。
コーチとしての役割は、クライアントがその選択をできるように支援し、禍を未来の可能性に変える力を引き出すことです。

禍はあなたに訪れるかもしれません。
でも忘れないでください。
禍こそが福の種なのです。
あなたがそれをどう解釈し、どう行動するかが、未来を変えていきます。