人生に困ったことは起こらない ― 管理職のための「解釈力」習慣

困難は「困難」ではなく、解釈次第で未来を変える

「人生に困ったことは起こらない。
起こった出来事で困るかどうかを決めるのは自分である。
人生は自分の気持ち次第でどうにでもなる。」

この言葉は、米国の著名なモチベーショナルスピーカー、ジグ・ジグラーの名言です。私はこの言葉がとても好きです。
なぜなら、この考え方ひとつで、人の人生も、そして企業組織の未来も、大きく変わると確信しているからです。


「一見悪い出来事」がもたらす成長のサイン

運が良い人というのは、必ずしもトラブルや逆境が少ないわけではありません。
むしろ「一見悪そうに見える出来事」からも学び、成長し、そして結果として幸運を引き寄せていく人たちです。

例えば、プロジェクトの失敗や部下との衝突、クレーム対応。
管理職としては避けたい出来事ばかりです。
しかし、その一つひとつは「ただの出来事」に過ぎません。

喜怒哀楽のうち、どの感情を抱くか。
それを「良いこと」と見るか「悪いこと」と見るか。
その価値判断をするのは自分自身です。

つまり、出来事そのものが人生を左右するのではなく、出来事の解釈が人生や組織の未来をつくっていくのです。


出来事を「サイン」と捉える思考法

私は人生で起こるすべての出来事を「サイン」だと考えるようにしています。
特に、マイナスに見えるような出来事こそ、重要なメッセージを含んでいる可能性が高い。

  • なぜ今この出来事が起きたのか
  • ここにどんな成長のチャンスがあるのか
  • 自分や組織が変わるきっかけは何か

こうした問いを持つことで、単なる不運に見えた出来事が「未来を良くするためのメッセージ」に変わります。

例えば、部下の退職は、組織にとって痛手であり、管理職としてはショックです。
しかし、それを「最悪だ」とだけ捉えてしまうと何も得られません。
逆に、「なぜ離職が起きたのか」「どんな改善ができるか」という視点を持てば、組織改善やマネジメント力向上のきっかけになります。


企業と管理職が陥る「外的要因依存」

多くの企業では、「業績不振の原因は市場環境のせいだ」「部下が期待通りに動かないから成果が出ない」といった声が上がります。
確かに外部環境や部下の行動は簡単に変えられません。
しかし、ジグラーの言葉が示す通り、自分の気持ち次第でどうにでもなるのです。

これは「ポジティブシンキング」だけの話ではありません。
管理職は組織における意思決定者であり、影響力を持つ立場です。
その人が出来事にどんな解釈を与えるかによって、部下の行動、組織文化、ひいては企業の方向性が変わります。


「配られたカード」で勝つのがマネジメント

人生も経営も、ポーカーのようなものです。
配られたカードに文句を言っても、勝つことはできません。
むしろ、与えられた条件の中で、いかに勝機を見出すかがリーダーの腕の見せどころです。

  • 人員が足りないなら、その制約の中で最大の成果を出すにはどうすればよいか
  • クレームが来たなら、顧客満足度を向上させる絶好の機会と捉えられるか
  • ライバルに後れを取ったなら、そこから市場の変化を先読みできるか

管理職にとって大切なのは「起こった出来事をどう見るか」「どう活かすか」という視点です。


邪魔する人は「盛り上げ役」

人生でも組織でも、自分が正しいと思って行動しても必ず反対する人が現れます。
これは避けられない現実です。
しかし、それを「敵」と捉えてしまうと、感情の対立だけが残り、成果は遠のきます。

むしろこう考えてみてください。
反対する人は、あなたの人生や組織を盛り上げてくれる存在なのです。

サッカーでキーパーがいなかったら試合はつまらないですよね。
同じように、異なる意見や反対意見があるからこそ、組織は議論が生まれ、より良い方向に進むことができる。

反対者を「盛り上げ役」と見れば、感情的にならず冷静に対応できます。
結果として、あなたのリーダーシップはより信頼され、組織力も高まります。


損得をどう解釈するかで結果が変わる

「損なことを考えて得することはない」
これは私が長年の経験で痛感したことです。

自分にとって損だと感じる出来事を、あえて「得に変えるにはどうすればいいか」と考えることが、管理職にとって非常に重要です。
なぜなら、組織の中で起きる不都合の多くは完全には避けられないからです。

  • 業績の落ち込み
  • 優秀な人材の流出
  • 社内対立
  • 想定外の外部環境変化

こうした出来事は「最悪」と捉えればただの損失ですが、未来の資産に変えることもできます。
その差を生むのは、管理職の解釈力です。


管理職に求められる「解釈力」の習慣化

管理職の立場にある方は、次の習慣を取り入れてみてください。

  1. 出来事を一度フラットに見る
     感情的な判断をする前に、「これは何のサインか?」と問いかける。
  2. 得に変えるシナリオを考える
     「この出来事から組織が得られる価値は何か?」という視点を持つ。
  3. 部下と共有する
     自分の前向きな解釈を言葉にして伝えることで、チーム全体にポジティブな影響を与える。

この3つを習慣化するだけで、あなたの周囲の空気が変わります。
部下は安心感を持ち、挑戦しやすい環境が生まれ、結果として組織のパフォーマンスは向上します。


最後に ― あなたはどんな人生(組織)を選びますか?

人生も企業経営も、与えられた環境で幸せになるゲームのようなものです。
起きた出来事を嘆くのではなく、「これをどう活かせるか」と問うことで、道は必ず開けます。

管理職であるあなたには、チームや組織全体の未来を左右する大きな力があります。
ぜひ、今日から出来事の解釈を変えてみてください。
「困ったことは起こらない」
この言葉を胸に、あなた自身とあなたの組織をより良い未来へ導いていきましょう。


まとめ

  • 出来事はすべて「ただの出来事」であり、価値を決めるのは自分
  • 管理職は「解釈力」によって組織文化と成果を変えられる
  • 損に見える出来事を「得」に変える視点を持つことで成長が加速する
  • 反対者やトラブルも「盛り上げ役」として感謝する
  • 人生も経営も、与えられた環境で幸せをつくるゲームである