【龍の教え】“今のあなた”がどこにいるかがわかる6つの段階

『易経』に隠された運命をひらく哲学


「易経」は、古代中国最高の“人生の設計図”

あなたは『易経(えききょう)』を読んだことがありますか?

「占いの本」「難しい古典」というイメージを持たれる方も多いかもしれません。
しかし本来の『易経』とは、古代中国において「帝王学の実践哲学書」として重んじられ、運命を乗りこなすための「人生の羅針盤」として代々読み継がれてきた名著です。

そこに描かれるのは、「流れを読む智慧」。
つまり、人生の“変化”にどう向き合い、どう決断し、どう調和するか。

現代を生きる私たちにとっても、それは大きな示唆に満ちています。

中でも私が好きなのが、『乾為天(けんいてん)』に出てくる「龍の物語」。

この物語には、人が人生を登っていく6つのステージが、龍という象徴を通して語られています。
人生のどこかで必ず誰もが通るこの6つの段階。
それを知っているか、知らないかで、“今の過ごし方”が大きく変わってきます。

「もっと早く知っておけばよかった」と心から思うからこそ、今日はこの物語をわかりやすくご紹介したいと思います。


龍の人生に学ぶ、あなたのステージとは?

1. 潜龍(せんりゅう)── 志を打ち立てる「準備の時期」

龍、まだ水底に潜む。
しかし内には天を目指す志あり。

この段階の龍は、まだ世に出ていません。
しかし、心の奥では何かが目覚め始めている

まだ結果は見えないし、誰からも評価されない。
だからこそ、「自分は何者かになれる」と信じる心がすべてです。

現代でいえば、まだ名もない学生、駆け出しの起業家、転職を考えている会社員。
目の前にはチャンスも壁もなく、ただ“焦り”や“迷い”だけがある──そんな時期です。

でも、ここで一つだけ大切なことがあります。
それは、“志を立てる”こと。

「自分は何を成し遂げたいのか?」
「なぜそれをしたいのか?」

明確な志は、やがて来るチャンスに備える最強の土台になります。


2. 見龍(けんりゅう)── 師に出会い、学ぶ「成長の時期」

龍、ついに姿を現す。
だがまだ空には昇らず、慎み深く学ぶ。

潜んでいた龍が、ついに水面に顔を出します。
ここは、「外の世界」に触れ始めるタイミングです。

このステージのキーワードは、師との出会い

自分よりも一歩先を進んでいる人。
考え方、生き方、在り方に惹かれる人。
そんな存在に出会うことで、龍は成長への道を歩み始めます。

「自分にはまだ足りないことがある」と知るのもこの時期。
だからこそ、“謙虚さ”が問われます。

誰かを真似ることは、劣っている証ではありません。
それは、“自分を磨く覚悟”の証なのです。


3. 乾龍(けんりゅう)── 試練に学び、鍛えられる「修行の時期」

龍、日進月歩。
風を知り、雲を学び、空を夢見る。

この段階では、龍はひたすらに努力し、鍛えられます。
失敗し、転び、悩みながら、でも諦めない。

この「乾龍」の時期を避けて飛躍した者はいません。
見えないところで“コツコツやってきた人”こそが、やがて飛躍するのです。

成果はまだ出ないかもしれません。
でも、着実に“中身”が磨かれています。

この時期に学ぶのは、「忍耐」と「信頼」。
目先の結果に一喜一憂せず、長期のビジョンに従って歩き続けることが求められます。


4. 躍龍(やくりゅう)── 飛躍の「機」をつかむ時

龍、いよいよ躍り出る。
準備を終え、時を見定め、風を読む。

これまでの努力が形になり始め、「いまこそ動くべきときだ」という直感が湧いてくる。
それが「躍龍」の段階です。

ここで問われるのは、“機”をとらえる力です。

準備してきたのに、タイミングを逃して何も起きなかった人も多い。
逆に、「今だ」と思ったときに勇気を出せた人は、人生が一気に動き出します。

だから大切なのは、内なる声を聞く力。
外の声や恐れに振り回されず、「今、自分は行くべきか?」を見極める直観力です。


5. 飛龍(ひりゅう)── 雲を呼び、雨を降らす「貢献の時期」

龍、ついに天へ昇る。
雲を動かし、雨を降らせて、世界を潤す。

まさに“絶頂期”。
これまでの学びと努力が実り、社会や周囲への大きな影響を与えるようになります。

ここでの龍は、自分のためではなく、他人のために動き始める

人々に希望を与え、道を示し、後進を育てる。
その姿は、まさに「雲を呼び、雨を降らす」存在。

ただし、ここにも落とし穴があります。
それが、次の段階──


6. 亢龍(こうりゅう)── 驕り高ぶるとき「破滅の兆し」

龍、あまりに高く昇りすぎて、自らを見失う。

成功は、しばしば人を盲目にします。

「自分は何でもできる」
「もう学ぶことはない」
「人の声など聞く必要はない」

こうした思い上がりが始まると、龍は天に昇りすぎて、やがて墜ちます。

『易経』は、これを「凶」と断じています。

成長し、飛躍したからこそ、謙虚さを失わないことが何より大切

高く昇った龍ほど、再び「見龍」のような姿勢に戻るべきなのです。


自分の“今”を知れば、道は見えてくる

この6つのステージを読んで、「あ、いま自分はこの段階かも」と思った方もいるかもしれません。

大事なのは、自分の今いる場所を受け入れ、「今すべきこと」に集中することです。

  • 潜龍なら、まず志を持つこと
  • 見龍なら、謙虚に学ぶこと
  • 乾龍なら、日々の積み重ねを信じること
  • 躍龍なら、勇気を出して踏み出すこと
  • 飛龍なら、他者のために動くこと
  • 亢龍なら、初心を思い出し、地に足をつけること

『易経』は、時を読む書であり、流れを掴む智慧です。
何かがうまくいかないとき、それは「今が飛ぶ時ではない」だけかもしれません。
でも、あなたの内なる龍は、いつか必ず空を目指して動き始めます。


最後に──「早く知っておけばよかった」と思わないために

私自身、もっと早くこの“龍の物語”を知っていれば、あんなに焦らなくてよかったのに。
もっと今を信じて、一歩一歩を大事にできたのに──そう思うことがあります。

でも、気づいた今が、まさに「見龍」への扉かもしれません。

だからこそ、あなたにも伝えたいのです。

今の自分のステージを知ることは、未来への最短ルートになる。

『易経』が教えてくれるのは、“無理に変える”のではなく、“流れに乗る”という生き方。

さあ、あなたの龍は、今どこにいますか?
そして、次に向かうべき空はどこにありますか?